たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

 これから雅貴さんと出掛けるのに、こんな鳥の巣のような髪では行けない。

 どうしてしっかり乾かさなかったのだろうと、昨日の自分を恨む。

 
「朝食を用意してあるから、リビングにおいで」


 雅貴さんはそう言うと、私の部屋をあとにした。

 約束を忘れていたうえに寝坊までしたのに……。

 怒らないどころか、朝食まで用意してくれる雅貴さんの懐の深さに感動する。

 私にはもったいない人だと改めて思う。

 少し前まで私にとって彼は尊敬する上司であり、近寄りがたい人でもあった。

 名前を呼ばれるだけで緊張していたのに、まさか結婚をして夫婦になるとは思ってもみなかった。

 雅貴さんと想いが通じ合ったのが先週の日曜日。

 あれから一週間が経とうとしているが、その間はずっと仕事だったこともあり私たちにそれほど大きな変化はない。

 両思いになったからといって、突然いろいろと変わるものではないのかもしれない。

 交際経験がないのでよくわからないけれど、ひとつわかることがあるとすれば、約束を忘れて寝坊しているようではいけないということだ。

 雅貴さんに似合う女性になれるよう、もっとしっかりしないと……!


< 192 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop