たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
百貨店特有の落ち着いた雰囲気は一変し、たくさんの客の熱気に溢れている。
数量限定で発売されるチョコもあるため、お目当てのものを手に入れようと気合が入っているのかもしれない。
一方の私はチョコレートは好きだけれど、このブランドのものが欲しいというのは決めずに来た。実際に目で見て、惹かれたものを数個購入しようと思っている。
さっきまでの沈んでいた気持ちも、好物のチョコレートを見た途端に回復した。
悩みが持続しない単純な性格だと改めて思う。
「どれにしようかな……」
美味しそうチョコレートがたくさんあって迷ってしまう。
「雅貴さんはどれか購入しますか?」
隣を歩く彼に尋ねると、首を横に振られる。
「いや、俺は必要ない。欲しいものが決まったら教えて」
……なぜ教える必要があるのだろう。
疑問に思っていると、それが伝わったのか雅貴さんが再び口を開く。
「俺が買う」
「えっ、いえ、結構です。自分で買いますので」
そんな図々しいことできるわけがない。全力で否定する私の頭に雅貴さんの大きな手がぽすんと乗った。
「俺がそうしたいんだよ。妻ならこういうときは遠慮せずに喜んで、好きなだけ買うものだ」
そういうものなのだろうか。