たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
「それに、会場内にある全てのチョコを買ったとしても、俺の懐は痛くも痒くもない」
「流石に全部は買いませんよ」
いくらくらいになるのだろう。でも、確かに大企業の社長である彼なら余裕で払えてしまいそうだ。
「欲しいと思ったチョコが見つかったら買ってください」
「もちろん。ゆっくりと選んでいいからな」
そう言って優しく表情を緩める雅貴さんについ見惚れてしまった。
その後、一時間ほど会場内を歩き回り、五つのチョコレートを購入。
会場を出ようとしたところで雅貴さんが立ち止まる。
「すまない。電話だ」
スマートフォンを取り出して画面を確認した彼の表情が途端に引き締まった。
「仕事の案件だ。悪いが、少しここで待っていてもらえるか。すぐに戻る」
「はい」
頷くと、雅貴さんはスマートフォンを耳に当て、離れた場所へと向かった。
時間がかかるだろうか。
近くに座れそうなイスを見つけて腰を下ろす。
休日にまで電話が掛かってくるような用事とは何だろう?
雅貴さんが現在抱えている案件を思い出し、電話の内容を考えていると、見覚えのある人物が視界に入った。