たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
午後五時。
多くの招待客が席に着き、就航記念セレモニーが始まった。
まずは船を所有する成海商船の社長である成海社長の挨拶だ。
彼が登壇した瞬間、ピリッと空気が引き締まるのを感じた。
国内外から集まった大勢の招待客たちの視線を一身に集めても成海社長は物怖じすることなく堂々とスピーチをする。その姿は、三十代の若き社長ながらも貫禄を感じた。
以前から思っていたが、成海社長はただそこにいるだけで強い存在感を放つ人だ。
成海社長の挨拶のあとは船の紹介と説明があり、続けて船長の挨拶で登壇したのは、成海郁真キャプテン。
鳴海グループを経営する鳴海家本家の長男で、鳴海社長の二歳上の兄だ。
本来なら彼が成海グループの後を継ぐはずだったが、経営に回るよりも自身で船を操縦したいという夢を叶えるため後継者になることを拒んだ異端者だと聞いたことがある。
成海キャプテンとは何度か話したことがあるが、明るくフランクな人で、私としては成海社長よりも話しやすい。
挨拶でもそんな彼の人柄が出て、会場内に楽しい笑いが起こった。