たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
「成海社長か家内か。どちらが先に戻ってくるかな」
「それまで私たちはここで待ちましょう」
「そうしようかね」
私の言葉に峰田さんは笑いながら頷いた。そして、私を見つめたままふと真面目な表情になる。
「……そうだよな。梅本さんの声はこれだよな」
なにかを考えるように言葉を発する峰田さんに、私は首を傾げる。
「どうかされましたか?」
私の声が何かあるのだろうか。
少ししてから峰田さんがやや声を潜め、「実はね」と切り出す。
「梅本さんが予約したはずのバスがキャンセルになっていた件があっただろ」
「はい。就航記念セレモニーのときですね」
「そのバス会社なんだけど、僕が今勤めているタクシー会社の関連会社なんだよ」
「え、そうなんですか!?」
それは知らなかった。気づかないまま、私はキャンセルしたバス会社の関連会社にタクシーを依頼していたようだ。
峰田さんが言葉を続ける。
「そのとき、予約していたはずのバスがキャンセルされていたと聞いて、しっかり者の梅本さんがそんなミスをするのかずっと気になっていたんだ。それで、最近バス会社に行く用事があったから事情を説明したうえでキャンセル電話の録音記録を聞かせてもらったんたけど……」