たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
そこで峰田さんは言葉を切ると、言い辛そうに続きを話す。
「声に違和感があったんだ。電話では、成海商船の秘書課の梅本と名乗っていたが、梅本さんの声ではないような気がした」
「どういうことですか?」
「誰か別の人が梅本さんになりきってバスをキャンセルしたんじゃないかな」
「えっ……」
誰がそんなことを?
戸惑いから、体が固まってしまった。ぴたりと動きを止めた私を見て、峰田さんが焦り出す。
「いや、でも、僕の勘違いかもしれないから」
勘違いではない気がする。
実は私もなんとなくその可能性を考えてはいた。だって私はバスをキャンセルをした覚えが本当にない。
でも、じゃあ誰が私になりすましてバス会社に連絡をしたのだろう。
もしかして、ランチミーティング用のお弁当がキャンセルされていた一件も、同じ理由だろうか……。
「恵麻。待たせたな」
そこへ雅貴さんが戻ってきた。彼の視線が私から峰田さんへ向けられる。
「お久しぶりです。お元気でしたか」
「はい。成海社長もお元気そうで」
ふたりが挨拶を交わしているのを私はどこか上の空で聞いていた。