たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
《恵麻ちゃんにお礼を言いたいと思ったんだ》
電話の向こうから郁真さんの声が聞こえたと同時に、リビングの扉が開き、雅貴さんが姿を現す。
ソファにいる私をちらっと見たあとで、キッチンへ向かいミネラルウォーターをグラスに注いで飲んだ。
お風呂から出てきたばかりの彼はラフな部屋着姿で、いつもセットしている前髪もぺたんと下りている。
つい雅貴さんに目がいってしまうが、今は郁真さんと電話中だと思い出して意識をそちらに戻した。
《雪白さんとの仲を繋いでくれてありがとう。おかげで今度、デートをすることになったよ》
「よかったですね、郁真さん」
この一週間でまさかここまでふたりの仲が進展するとは思わなかった。
交際に発展するのも時間の問題だろうし、そうなったらうれしい。
《恵麻ちゃんのおかげだよ》
「いえ、私はなにも」
ただ、連絡先を渡しただけなので、お礼を言われるようなことはしていない。
《そういえば、あれから雅貴とはどう?》
郁真さんが突然話題を変えた。ちらっと雅貴さんを見たあとで、視線をテレビの横に置かれた観葉植物へ移す。
「はい。仲良くやっています」
《そっか。それなら良かった》
「郁真さんのおかげです。ありがとうございます」