たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

 あのとき、試してみようという郁真さんの行動がなければ、私と雅貴さんは気持ちを伝え合うことがないまま偽装夫婦を続けていたかもしれない。


《実は、あのあと雅貴から電話があったんだ。恵麻ちゃんにちょっかい出すなって怒られたんだけど、あいつから連絡がきたのが久しぶりでちょっとうれしかった》


 郁真さんがクスッと笑う。


《それに、ありがとうと言われた。すごく小さな声だったけどね。恵麻ちゃんと話し合うことができて、お互いの気持ちを確かめ合えたって》

「そうだったんですね」 


 私の前で郁真さんの話をするときの雅貴さんはいつもすごく冷たい空気を放っているので、ふたりのことを不仲だとずっと思っていた。

 でも、敵視しているのは雅貴さんだけで、郁真さんは弟である雅貴さんを大切に想っているのかもしれない。

 雅貴さんから久しぶりに電話がかかってきたことを嬉しそうに話す様子や、ありがとうと言われたことに喜ぶ彼の反応からもそれが伝わってくる。

 一方の雅貴さんも郁真さんに電話をして、ありがとうと言えたのなら、少しは郁真さんに対する敵対心が落ち着いたのだろうか。


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