たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

 そうだといいなと思いながら郁真さんの話を聞いていると、ぽすんとソファが軽く沈むのがわかった。

 視線を向けると、すぐ隣に雅貴さんが座っている。目が合い、彼の手が伸びてきて私の手からスマートフォンをすっと奪った。

 えっーーと思ったときには唇が重なっていた。

 電話の向こうから聞こえてくる《恵麻ちゃーん》と私を呼ぶ郁真さんの声が、しんと静かな部屋に響く。

 最初は触れるだけだった雅貴さんのキスは次第に深くなり、初めての感覚に思わず声が漏れそうになった。

 でも、電話の向こうの郁真さんに聞こえてしまうかもしれないと思い、なんとか耐える。

 そんな私の気も知らずに、雅貴さんの舌が私の唇を割って侵入してきた。


「……ん」


 耐えていたのにこれ以上は無理だ。

 体からは力が抜け、雅貴さんに支えてもらわなければ倒れてしまいそうになる。

 というよりも、雅貴さんはなぜこのタイミングでキスをしてくるのだろう。

 まだ郁真さんと話していたのに。

 深いキスのあとでようやく唇が離れていく頃には私の息は上がっていた。 

 雅貴さんは手に持ったままのスマートフォンを耳に当てる。


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