たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
「さすがにもう切れてるか」
応答がないので郁真さんは電話を切ったのだろう。途中で会話を中断させたことを改めて連絡して謝罪しないと。
そもそも雅貴さんが突然キスなんてしてくるのがいけない。
郁真さんに気づかれていないといいけれど……。
「恵麻」
スマートフォンをソファに置いた雅貴さんの視線がすっと私に向けられる。
「夫の前で他の男と電話をするなんていい度胸してるな」
「相手は郁真さんですよ」
ムスッとした表情を浮かべる雅貴さんだが、私が電話をしていたのは郁真さんだ。兄なのだから、電話で話すくらいはいいと思うけれど。
「兄でも許さない」
ぽんと肩を押され、私は後ろに倒れる。
上から覆いかぶさってきた雅貴さんが、私の手に指を絡めるように拘束してきた。
「今朝、まだ手は出さないと言ったばかりだが。二度と俺の前で男と電話なんてしないよう、きみが誰のものかをわからせないといけないな」
雅貴さんの顔がぐっと近づき、唇に柔らかなものが触れる。
再びのキスに私の体はじわじわと熱をもっていく。そんな私を追い詰めるかのようにキスは次第に深くなり、雅貴さんは舌を絡めたり吸ったりを繰り返した。