たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
裏切り


 *

「ーーさん、梅本さーん」


 名前を呼ばれていることに気付いてハッと顔を上げた。

 玉置さんと目が合い、「大丈夫ですか?」と尋ねられ、慌てて笑顔を作る。


「だ、大丈夫だよ」


 そう答えて、ランチのそばを食べた。

 二月に入っても厳しい寒さが続いている。会社の中は暖かいが、窓から見える外の様子はどんよりと曇り、風も吹いて寒そうだ。

 暖かいそばを食べたあとで、くしゅんとくしゃみが出た。ティッシュを取り出して鼻をかむ。


「風邪長引いてますね」


 玉置さんが心配そうにこちらを見る。

 先週半ばに熱の出ない風邪を引き、鼻水とくしゃみ、そして咳が続いている。花粉のせいかもと思ったが、まだ少し早い気もするのでやはり風邪だろう。

 熱もないし、だるくもなく元気なので仕事は休まず、マスクをして出社している。けれど、そんな私を玉置さんは心配なようだ。


「最近ぼーっとしてることが多いし、体調悪いんじゃないですか?」

「ううん、大丈夫」


 ぼーっとしてしまうのは風邪のせいではないので心配いらない。

 ふとした瞬間に雅貴さんを思い出してしまうのが原因だ。


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