たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

 さっきは彼の声で不機嫌を察知したが、冷たい表情を見てやはり機嫌があまり良くないとわかる。

 雅貴さんにこんな表情を向けられたのは久しぶりだ。

 最近は優しい彼しか見ていなかったので、背筋にぞくりと冷たいものが走る。


「社長。どのようなご要件でしょうか」


 恐る恐る尋ねると、雅貴さんが静かに口を開く。


「恵麻。シャニック社のハワード支社長宛に俺が頼んだ資料を郵送したよな」

「はい。先日発送したので、すでに到着している頃かと思います」

「そうだな。今さっき届いたと連絡をもらった」


 じゃあどうしてわざわざ私を呼び出して確認をしたのだろう。

 もしかして、雅貴さんが不機嫌な理由と関係しているのかもしれない。

 雅貴さんが珍しく困った様子で髪をかき上げる。


「ハワード支社長から俺の個人メール宛てに、違う資料が届いたと連絡がきた。しかも別会社の重要情報が載っている資料だ」

「えっ……」


 そんなはずない。私は確かに雅貴さんに頼まれた資料を封筒に入れてシャニック社のハワード支社長宛に送った。

 それなのに、どうして?

 もし本当にシャニック社に別会社の重要情報を送ってしまったのなら、情報漏洩にあたる深刻な事態だ。

 動揺から言葉を失う私に雅貴さんが告げる。


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