たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
「これから確認と謝罪に行ってくる」
雅貴さんはそう言うとイスから立ち上がり、片手でスーツのボタンを止める。そんな彼に慌てて声を掛けた。
「私も一緒に行きます」
「いや、きみは来なくていい」
冷たくぴしゃりと断られた。
「余計に話がこじれそうだ。俺ひとりで行くから、車だけ手配を頼む。ここの電話を使って構わない」
「承知しました」
私は雅貴さんの執務デスクに近づき、受話器を手に取ると今すぐエントランスに車をつけてくれるよう専属ドライバーに連絡を入れた。
受話器を置いてから、雅貴さんを見る。
「下で待機しているそうです」
「わかった」
雅貴さんが私の横をすっと通り過ぎる。
「社長。申し訳ございません」
私はすっと腰を曲げ、謝罪をした。
けれど彼は立ち止まらず、そのまま社長室を出ていく。閉まった扉の音が虚しく響いた。
ひとりになった瞬間、事の重大さに気づきその場に崩れ落ちる。
どうしよう……。
とんでもないことをしてしまった。
送るべき情報とは別の情報ーーしかも別会社の重要情報を誤って郵送してしまうなんて。
でも、私じゃない。