たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

 でも、広報部の彼女が秘書室に来て、郵便物の集配場所を触っていたら怪しまれるに決まっている。

 秘書室には常に誰かいるのだから、誰の目にもつかず郵便物をすり替えるのは難しいと思う。

 もしかして集配場所から担当者が郵便物を回収したあとで資料をすり替えたのだろうか。

 いや、やめよう。

 確信がないのに、霧矢さんを疑うなんて最低だ。そんな自分が嫌になり、さらに落ち込む。 

 今は仕事をするような気分にはなれないが、やるべきことは溜まっている。それすら放棄したら、秘書として失格だ。

 ……いや、きっともう失格だ。


『三度目はないと思え』


 以前、雅貴さんに言われた言葉を思い出した。

 もしかして私は彼の秘書を外されてしまうのだろうか。

 せっかく叶えた子供の頃からの夢だったのに。

 それに、こんなミスをして雅貴さんは私に幻滅したに違いない。妻としても信用できないと、離婚を切り出されたらどうしよう。

 せっかく想いが通じ合い、偽装夫婦から本物の夫婦になれたのに……。

 そう思うだけで、目に涙が溜まってくる。けれど、泣いている場合ではない。今は仕事をしよう。

 なんとか気持ちを立て直し、途中だった資料の作成に再び取り掛かった。


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