たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
それから時間が経過し、終業まであと三十分ほどというところで雅貴さんが秘書室に現れた。
しかし、彼の視線は私ではなく雪白室長に向けられる。
「雪白、少しいいか」
「はい」
呼ばれて、雪白室長が席から立ち上がる。そして、雅貴さんと一緒に秘書室を後にした。
今回の誤送付の件をふたりで話しているに違いない。
しばらくして雪白室長が戻ってきた。
「梅本さん。一緒に来てくれる?」
「はい」
私は勢いよくイスから立ち上がり、出入口の扉にいる雪白室長を振り返る。
彼女の視線は私の隣へ向けられていた。
「それと、玉置さんもいいかしら」
玉置さんが振り返る。そして、ゆっくりとイスから立ち上がった。
どうして玉置さんも?
おそらく誤送付の件で私は呼ばれたのだろう。それなら玉置さんは関係ないはずだ。
「行きましょうか、梅本さん」
それなのに玉置さんは素直に呼び出しに応じる。
今回の件で、もしかして彼女にも何か迷惑をかけてしまったのだろうか。
私を慕ってくれる後輩も巻き込んでしまい胸が痛む。
扉に向かって進んでいく玉置さんの背中を見て歩きながら、私は奥歯をぎゅっと噛み締めた。