たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
秘書室を出た私たちは雅貴さんのいる社長室に向かう。
入室すると、彼は執務デスクのイスにどっしりと座っていた。
「社長。梅本と玉置を連れてきました」
雅貴さんの前に雪白室長、私、玉置さんの順に並ぶ。
彼は引き出しから分厚い資料を取り出し、それをデスクの上に置いた。
「これが先方に間違って送った資料だ」
私はそれをまじまじと見つめる。やはりこの資料を封筒に入れた覚えがない。
でも、それを証明できるものがないので、言ったところで信じてもらえないかもしれない。
このままだと私のミスになってしまう。
悔しくて、ぎゅっと唇を噛み締めた。
「恵麻。この資料を見て、何か気づくことはあるか」
「気づくことですか?」
雅貴さんに問われ、私は資料をじっと見つめる。クリップで留められた二十枚ほどの資料の束だ。
何か気づくこと、と突然言われても……。
「シャニック社へ行って、実際の資料を自分の目で確認して正解だった。これを送ったのは恵麻じゃない」
雅貴さんがきっぱりとそう言い切る。
「恵麻なら、資料の束にクリップの跡が残らないように、紙の切れ端を差し込んでいるはずだ。だが、この資料にはそれがない」
そう言われて、資料をもう一度よく見る。
確かに私は雅貴さんが言った通りの方法でいつも資料を送っている。けれど、この資料は切れ端が差し込まれていない。