たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
私が雅貴さんからシャニック社へ送るように頼まれた資料は、クリップの跡が残らないように紙の切れ端を挟んだ覚えがある。
「ということは、これを送ったのは恵麻じゃない」
雅貴さんの視線が私の隣ーー玉置さんに向けられる。
「玉置。専務が前にボヤいていたぞ。梅本のようなやり方で書類を送ってほしいが、面倒くさいのかきみはそれをしてくれないと」
雅貴さんの目がすっと細められる。
「恵麻が封筒に入れた資料を別のものにすり替えたのは玉置、お前だな」
雅貴さんの鋭い声が響き、一気に緊張が走る。
まさか玉置さんが……。
すると、彼女がすぐに反論する。
「それだけでは私がやったってことにならないですよね。もしも違ったらどう責任取ってくれるんですか」
犯人扱いされているのに玉置さんは冷静だ。そんな彼女に雅貴さんは鋭く言葉を返す。
「俺が確証のないことを言うと思うか」
彼はジャケットの胸ポケットから何かを取りだした。親指と人差し指でつまんでいるのはネイルチップだ。
この柄、見たことある……。
隣の玉置さんに視線を向けると、彼女の瞳が一瞬揺れるのがわかった。
「どうしてこれがここにあるか、って顔をしてるな」
雅貴さんの静かな威圧を込めた声が社長室に響く。