たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

「すみません。私も失礼します」


 涙を見せてはいけないと、社長室を後にするため彼に背中を向けた。

 そのまま扉へ向かおうとしたが、後ろから伸びてきた両手に体ごと引き寄せられ、きつく抱きしめられる。


「どこにも行く必要はない。泣きたいなら俺のそばにいろ」


 くるんと向きを変えられ、真正面から抱きしめられた。私の背中にまわる彼の腕に力がこもる。


「雅貴さん」


 私はすがるように彼のジャケットをぎゅっと握り締めた。
 
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