たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
夢を叶えたから……


 *

 二月も中旬に入り、少しずつだが春の気配を感じる日も増えてきた。とはいえ、朝晩は冷え込むので寒暖差には注意が必要だ。


「ーー梅本さん」


 社員食堂でランチを取っていると後ろから声を掛けられた。

 振り向くと霧矢さんが立っている。


「ここいいかしら」


 隣の席に座ってもいいか尋ねられ、私は「はい」と頷いた。

 イスに腰を下ろした霧矢さんのトレーには山菜うどんが乗っている。

 そういえば、以前一緒にランチを取ったときも彼女は同じものを食べていた。


「あら、梅本さんも山菜うどんね」


 霧矢さんがくすっと笑う。

 私も今日は彼女と同じメニューだ。

 昨日まで風邪で休んでいたこともあり、食欲がまだ回復しておらず、それでもうどんなら食べられると思った。


「いただきます」


 霧矢さんがうどんを口に運ぶ。


「体調はどう? しばらく休んでいたんですってね」


 一口目を食べ終えたところで、彼女は私に尋ねた。


「はい。風邪をこじらせてしまって」


 二月に入ってからずっと体調が悪かった。そんな中で玉置さんの件があり心が限界を越えたのか、その翌日は高熱が出た。


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