たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

 玉置さんに騙され、霧矢さんを疑ってしまった自分が恥ずかしいし、ずっと後悔していた。


「資料をすり替えたのは霧矢さんだと思っていました。私はたぶんあなたに嫌われているので」


 後半は小さな声でぼそっと告げる。

 霧矢さんは変わらずきょとんとした顔をしていたが、しばらくしてからくすっと笑った。


「それは私が成海くんを好きだから?」


 じっと見つめられながら問われ、私は頷く。すると彼女はふふっと笑った。 


「確かに私は成海くんが好きよ。大学生の頃からね。だから彼の会社に入ったのに、少しも私に振り向いてくれない。それなのにあなたとあっさり結婚するんだもの、私はあなたが大嫌い」

「えっーー」


 面と向かって言われるとショックだ。

 けれど、大嫌いと辛辣な言葉を投げてきたわりに霧矢さんの表情は優しい。


「でも、成海くんは私のことを少しも恋愛対象には見ていない。だからもう諦めることにしたの」


 霧矢さんはそう言うと、すっきりとしたような笑顔を見せる。


「四月から課長に昇進もするし、今以上に仕事に力を入れるつもりよ。成海くんを追いかけて入った会社だけど、今は仕事の方が楽しいし、大事なの。だから、成海くんなんてもう知らないわ」


 霧矢さんが微笑む。そして、私を見つめた。


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