たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

「雅貴さん。あのミスが私ではないとすぐに気付いてくださって、ありがとうございました」


 先方に出向き、資料を見て、クリップの跡が残らないように差し込む紙がないことで彼は私のミスではないと気付いてくれた。

 逆を言うと、いつもそうやって資料を送る私を知っていてくれたことになる。


「あのとき、あのまま私のミスで話が進んでしまったら、大好きな秘書の仕事はもう続けられないと思いました」


 秘書は子供の頃からの夢だ。

 努力して叶えたのに、それがなくなってしまうと思うとこわかった。


「でも、私はまだ秘書を続けられる。これからもよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしく頼む」


 雅貴さんが静かに微笑む。

 秘書になるという夢を叶えたから、私は雅貴さんに出会えた。

 こんな私を理解してくる大切な人だ。 


「愛してるよ、恵麻」


 雅貴さんの手が私の頬を優しく包む。

 私を見つめる彼の瞳が次第に熱を帯び、それに誘われるように体の奥がきゅんと疼く。

 雅貴さんの顔がゆっくりと近づき、目を閉じると、そっと唇が触れた。



Fin


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