たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

 確か、部屋に備え付けのデスクにタブレットを置いたはずが見当たらない。そこには、スキンケア用品や飲みかけのペットボトル、小腹が空いたとき用に持参したお菓子などが散らかっているだけだ。


「どこにいったかな。確かここに……」

「そこにある、それは違うのか」


 独り事を呟きながら捜していると、背後から成海社長の声が聞こえた。腕を組み、壁によりかかる彼からは“早くしろ”という無言の圧が伝わってくる。

 成海社長の目線の先はベッドだ。


「そのスーツの下だ」

「下……」


 ベッドの上には今日着ていたスーツが脱ぎ散らかされている。

 近づいてスーツを退けると、その下にタブレットがあった。

 デスクの上に置いたと思っていたが、ベッドにあったらしい。黒いスーツとタブレットカバーの色が同じで気付かなかった。


「ありました」


 タブレットを手に取ると、ピンク色の生地の何かが一緒に付いてきた。


「……あ」


 それが今日身に付けていたブラジャーだとわかると、とっさにベッドの布団の下に隠す。

 成海社長に見られた!?

 恐る恐る彼に視線を向けると、わざとらしく視線を逸らされた。

 どうやら見られたらしい。

 ……最悪だ。

 散らかった部屋に、よれよれの部屋着。それにブラジャーまで見られるなんて。


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