たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
秘書として成海社長の一週間のスケジュールは頭に入れているが、念のため確認してから答える。
「明日はもう全部埋まってる」
午前は視察があり、そのまま移動してランチは取引先企業の社長と会食、それが終わり次第会社に戻り二つの会議に出席予定だ。
「ですよね。どうしよう……」
玉置さんは肩を落とし、深いため息を吐いた。
「何かあったの?」
困った様子の彼女が心配になり、尋ねる。
「それが、専務が明日どうしても社長と会って話がしたいそうで、時間を作ってもらえるよう交渉してほしいと頼まれて」
「またかぁ」
思わず苦笑した。
五十代後半の専務は、エネルギー事業の統括を担当し、仕事熱心で優秀な男性だ。
けれど、たまに無理難題を押し付けることがあるので秘書の間ではあまり印象が良くない。
専務の指示に玉置さんが頭を抱えている姿をたびたび目にする。
私は再び成海社長のスケジュールを確認した。
「明日の朝一なら少しだけ時間が取れるかも。視察に向かう前の三十分だけなら」
明日の成海社長のスケジュールは埋まっている。けれど、急な予定変更や会議の延長、今みたいな突発的な依頼を受けられるよう一日のスケジュールの中で予備枠を設けるようにしていた。