たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

「どうした」


 成海社長は持っていた書類をデスクに置いた。

 近くにはコーヒーの入ったカップが置かれているので、打ち合わせのあとで自分で淹れたのだろう。彼は自分のことは自分でやる人なので、秘書にコーヒーを頼むことはない。


「専務が明日、社長とお話したいことがあるそうです。午前中に予定しています視察へ向かう前に少しお時間がありますので、そこで予定を組ませていただきたいのですがよろしいでしょうか」

「ああ。問題ない」


 成海社長がカップを手に取り、コーヒーを口に含んだ。


「では、専務との予定を入れさせていただきます」


 成海社長の許可が取れたので、玉置さんに伝えなければならない。秘書室へ戻ろうとしたが、「梅本」と成海社長に呼ばれた。


「俺も頼みがあるんだが、いいか?」

「はい、構いませんが」


 改まった言い方に違和感を覚える。普段なら“頼み事”などといった言葉を使って、私に仕事を頼んだりはしないのだけれど……。


「シャニック社の日本支社長、ハワード氏を知っているか」

「はい。存じております」


 アメリカに本社を置く自動車メーカーで、世界各国に支社を持つ巨大企業だ。


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