たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
振り向くと五十代ぐらいのふくよかな体形の男性が私を見ながらにこにこ笑っている。
見たところ日本人のようだが、張り付けたような笑顔が胡散臭さを感じる。私の苦手なタイプだ。
けれど、成海社長の恋人役として参加しているので、誰にでもにこやかに接しなければならない。
「こんばんは」
笑顔で挨拶を返すと、男性が私との距離をほんの少しだけ詰めてきた。
「成海商船の社長さんの恋人の方ですよね」
「はい」
「少しお話してもいいです」
「え、ええ……」
なんだかぐいぐいとくる人だ。これまで挨拶に回ったゲストとは雰囲気が異なり、戸惑う。
それにこのパーティーはパートナー同伴が参加条件だったはず。これまで挨拶に回った方たちの隣には必ずパートナーがいたが、この男性はひとりだ。パートナーはどこにいるのだろう。
ちらっと辺りを見回す私に、男性はさらに尋ねてくる。
「成海商船で働く秘書の方だと聞いたのですが、上司である成海社長とはどのような経緯で交際に発展したんですか」
この質問は私と成海社長を知るゲストから何度か聞かれた。そして、事前に成海社長と回答は決めてある。
「一緒に仕事をしているうちにお互いに惹かれ合い、雅貴さんの方から想いを伝えていただいたことでお付き合いをすることになりました」
「それはいつ頃から?」
「半年ほど前です」
「そうかそうか。ぜんぜん気付かなかったな。成海社長にこんなに可愛らしい彼女がいたなんて」
男性がふむふむと頷く。