たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
この人は成海社長とはどういう関係なのだろう。
仕事で付き合いがあるのなら、秘書として私もだいたいは把握している。けれど、目の前の彼に見覚えはない。
「ところで、成海社長の元恋人は知っていますか?」
「元恋人、ですか?」
秘書とはいえ、成海社長のプライベートまでは知らない。それに、こんな質問をされるとは想定していなかったので答えに詰まる。
成海社長の元恋人とは、以前週刊誌に載った女優のことだろうか。でも、あれはデマだと聞いたことがある。
というよりも、この人はどうしてそんなことを聞いてくるのだろう。それを知ったところでどうするのだろう。
目の前の男性に不信感を覚えた、そのとき――。
「私の恋人に何か用でも?」
背後から肩にポンと手を添えられ、ぐいっと後ろに引っ張られた。気がつくと成海社長の背中が前にある。
「おお。これはこれは成海社長じゃないですか。ご無沙汰してます」
男性の不自然なほどに明るい声が聞こえた。
「お久しぶりです。その節はどうも」
成海社長が静かに言葉を返す。
口振りからして知り合いのようだけれど……。