たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
「パートナー同伴が必須のパーティーにどうやって潜り込んだかは知らないが、厄介なのに声を掛けられたな。何を聞かれた」
ギロッと睨まれるように見られ、思わずひぃっと声が出そうになる。
仮にも恋人なのだから、そんな目を向けるのはよくないと思う。
けれど、その設定を忘れてしまうほど今の成海社長は機嫌が悪いようだ。
とりあえず質問に答えよう。
「交際に発展した経緯と、期間を聞かれました。それについては打ち合わせ通りに答えましたが、成海社長の元恋人について聞かれたときは答えられませんでした」
すると、またもギロッと睨まれる。
元恋人について答えた方がよかったのだろうか。でも、知らないものは答えられないし……。
すると、成海社長が低い声で言う。
「呼び方」
「えっ」
そういえば、先ほどの説明の中で思わず普段の呼び方が出てしまったかもしれない。
「すみません。気をつけます」
雅貴さん、雅貴さん。
もう間違えないように心の中で唱えた。
成海社長がふうと小さく息を吐く。
「あの男は以前、俺のデタラメな記事を書いた記者だ」
「以前……あ、女優の」
「そうだ。知人に誘われて断りきれず食事会に参加しただけで、その場にいた女性と付き合っているという嘘の記事を週刊誌に載せられた」
……なるほど。だから、成海社長はあの男性に敵意を向けていたんだ。