たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
秘書室を出て、絨毯が敷き詰められた廊下を進む。重厚な扉の前で立ち止まり、軽くノックをした。
「どうぞ」
中から社長の声が聞こえたので扉を開ける。
「失礼します」
入室すると、社長のいる執務デスクへと向かった。
成海雅貴、三十五歳。
旧財閥である成海グループの御曹司で、現在はグループの中核企業である成海商船の社長を務めている。
有名大学を卒業後、アメリカの大学に留学経験があり英語が堪能。それだけでなく、グローバル企業の御曹司だけあり、他にも五つの言語が話せるらしい。
留学から帰国後は成海商船に入社し、海外事業部に配属されてからしばらくは海外支社を転々としていたそうだ。
その後、海外事業部部長に昇進し、三年前に副社長へ、そして昨年度に三十四歳という若さで成海商船の社長に就任したエリートでもある。
成海グループを経営する成海家本家の次男ではあるものの正式な後継者で、ゆくゆくはグループのトップに立つことが決まっている。
成海社長は経歴だけでも優秀なのに、さらには周囲の人を惹き付けるほど端麗な容姿の持ち主でもある。
シャープな顔立ちに、通った鼻筋、そしてキリッとした切れ長の目元からはクールで落ち着いた印象を受け、無造作に後ろへ流された艶のある黒髪からは爽やかさを感じる。