たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
成海商船は創業一族の成海家が代々経営権と株式を持ち、次の世代へと引き継ぎながら事業を続けるファミリービジネスを続けている。
だから跡取りである成海社長の結婚は不可欠。けれど、三十五歳の成海社長はいまだ独身。お父様はそれを危惧しているに違いない。
「なにかと理由をつけて断り続けているが、それもいい加減うんざりしてきた。いっそのことその中の誰かと適当に結婚してしまおうとも思ったが、夫婦らしいことを求められても俺は応じられない」
成海社長は背もたれから背を離し、まっすぐに私を見つめた。
「そこで思いついたのが梅本との偽装結婚だ」
「偽装結婚、ですか」
「結婚届を出して戸籍上は夫婦になるし、一緒にも暮らしてももらう。だが、夫婦らしいことは求めない。これまで通りの生活を続けていいし、もちろん仕事も続けてもらって構わない」
まるで商談をするときのように淡々と話す成海社長を前に私はなにも言葉を返すことができない。
もしかして成海社長は今回の記事をきっかけに私と偽装結婚する計画を早々に思いついたのではないか。
だからさっきも広報部長に真実を伝えようとした私をわざと名前呼びで制した。週刊誌の記事通り、私を恋人だと思わせるために。