たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
秘書として成海社長よりも先に職場には着いていたいので、いつも私の方が先に家を出る。それなのに今日は成海社長の方が支度が早いので、寝坊したのかと一瞬焦った。
けれど、今日の成海社長のスケジュールは朝一で隣県にあるグループ会社の視察へ行く予定になっている。そのためには午前七時半には自宅を出る必要があるので、社用車で自宅まで迎えに来てもらえるよう私が手配したのを思い出した。
ちなみに、視察の同行はいつも通り必要ないらしい。
成海社長の冷たさも感じるキリッとした切れ長の目が私を見る。
「起きたか」
「おはようございます」
愛用の首元がだらんと開いたよれよれ生地の部屋着のまま深く頭を下げた。
成海社長と一緒に暮らすにあたり部屋着をすべて一新しようとした。けれど、改めて買うのも面倒だし、成海社長には就航記念セレモニーの日の夜によれよれの部屋着姿をもう見られている。だから、まぁいいかと開き直り、着慣れたものをそのまま持ってきた。
下げていた顔を上げると、成海社長が私から素早く視線を逸らす。
「俺は先に出る。十二時からのランチミーティングまでには会社に戻る予定だ」