たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
「料理ができた方がいいとは思うのですが、なかなか……」
そう言って梅本はアハハと笑う。どうやらやる気はあるようだ。
「それなら一緒に作るか。俺でよければ教えてやる」
「えっ!」
苦笑いから一転、目を見開き驚いた顔を見せる梅本を見て思わずこちらの顔も綻んだ。
会社にいるとき、俺は彼女と必要最低限の会話しかしない。
俺がそうしてほしいと頼んだので連絡のほとんどはメールで済ませることが多いし、打ち合わせや会議、出張などにも同行させたことはないので、そもそも梅本と関わることはほぼない。
だが、そのせいで俺は彼女のことをまだよく知らない。
こんなに感情表現が豊かで、見ていておもしろい女性だとは思わなかった。
「ナポリタンを作るんだが食べられるか」
「はい。大好きです」
梅本が頷く。そのあとでハッとしたような表情を見せる。
「あ、いえ。でも、お昼ご飯は自分で買ってくるので……」
「一人分も二人分も作るのは同じだ。ちょっと待ってろ」
おそらく遠慮をしている梅本の言葉を遮り声を掛けたあと、俺はいったんキッチンを離れ寝室へと向かう。
クローゼットの中に閉まってあるエプロンを持ち、リビングに戻った。
「これを使え」