たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
「そうだったんですね」
玉置さん、大丈夫かな。
彼女が出て行った扉を見つめ、ふと心配になった。
「梅本さん。もし手が空いていたら、あとで玉置さんの様子を見てきてくれないかしら。本当は私が行きたいんだけど、これから会長の用事で出ないといけないのよ」
雪白室長も玉置さんが心配なのだろう。けれど、彼女は秘書室長と会長秘書を兼務しているので、これから会長に付いて出先へ向かわなければならないようだ。
会長は自身の予定に秘書を同行させることが多い。成海社長のお父様なのだが、親子でもタイプが違うらしい。
「わかりました。玉置さんが戻ってこなかったら、見に行ってみます」
「頼んだわ」
雪白室長は私の肩にポンと優しく手を乗せる。お願いねという意味だと思うが、ついビクッとしてしまった。
雪白室長が成海社長に想いを寄せているなんて聞かなければよかった。変に意識してしまう。
自分のデスクへ戻っていく雪白室長の背中を見つめながらため息がこぼれた。
気を取り直して、明日の会議に使う資料の作成を始める。
それから三十分が過ぎても玉置さんが戻ってこないので、彼女の様子を見に行くため専務室に向かった。