たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
「彼女は私の秘書ですが、なぜ専務と一緒にいるのですか」
静かにそう言った成海社長の声は普段よりも低く、ほんの少しの苛立ちが含まれているような気がした。
もしかして急ぎの用事があったのに、私が専務の会議に同行したので腹を立てているのかもしれない。
成海社長の会議はまだまだ続くと思っていたから、彼に許可を取る必要はないと思った私の考えが甘かった。
「申し訳ありません。私が勝手にーー」
「きみには聞いていない。俺は専務に聞いてる」
ぴしゃりと言われて、思わず口を閉じる。
一人称が“私”ではなく“俺”になっているところからも成海社長の静かな怒りが伝わってきた。
専務もさすがにマズいと思ったのか、表情が引きつっている。
「成海社長。あの、これは、えっと……」
しどろもどろになりながら専務が少しずつ後退して、私たちと距離を取っていく。
「あ! そうだ、資料はどうなったかな。急ぎますので、私はこれで」
くるんと背を向けると、専務は逃げるようにこの場からいなくなった。
成海社長とふたりきりになると、彼の視線が私に向けられる。