たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
わざわざ成海社長の手を煩わせるような要件ではない。やはりここは私が行くべきだ。
「梅本は専務に近づくな。それとも俺の秘書を辞めて専務の秘書になるか?」
「えっ」
どうやら専務との会話を聞かれていたらしい。
専務の秘書になりたいと思うわけないので、私は首を横に振った。
それを見た成海社長の口角が微かに上がる。
「俺もきみを専務に渡す気はない。秘書室に戻っていろ」
「はい」
私の返事を聞いた成海社長が背を向けて歩き出す。その背中が見えなくなるまで見送ってから、ハッとようやく息が吸えた。
『きみを専務に渡す気はない』
先ほどの成海社長の言葉を思い出し、頬がじわりと熱くなる。
もちろん秘書としての私に対する言葉だとわかっている。
それでも、真っ直ぐに見つめられながら、あんな言い方をされるとドキッとしてしまう。
落ち着け、私。
ふぅと一息ついてから、秘書室に向かって歩き出した。