たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
その夜は、仕事終わりに玉置さんと食事をしてから帰宅した。
専務の勘違いであるはずもない資料を探し続けていたことに玉置さんはだいぶ怒っていたし、それ以上に疲れ果てていた。
そんな彼女を労うために私から食事に誘った。
玉置さんの好物のラーメンを一緒に食べて、帰宅したのは夜の八時。
玄関には成海社長の靴があり、彼の方が帰宅が早かったようだ。
「ただいま戻りました」
リビングの扉を開けると、夕食を終えたばかりなのか成海社長はキッチンで洗い物をしていた。
「遅かったな」
「はい。玉置さんと食事をしていたので」
「どこで?」
本物の夫婦ではない私たちはお互いのプライベートにはあまり干渉しないようにしている。けれど今日は珍しく成海社長が尋ねてきた。
「ラーメン屋です」
「玉置とふたりか?」
「はい」
こくんと頷く。
成海社長は洗い物を終えたらしく、濡れた手をタオルで拭いた。
「専務は一緒じゃなかったんだな」
ふと尋ねられ、私は首を縦に振る。
「はい。玉置さんとふたりです」
「そうか」
静かに答えた成海社長がこちらに向かって歩いてきた。
私の目の前で立ち止まり、なぜかじっと見下される。
な、なんだろう……。