アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 城のメイドは制服を着ていれば良かったけれど、家付きのメイドはどこにいてもそのお家のイメージを背負っているのだ。自覚が足りなかったわ。自分の考えの甘さに思わず頭が痛くなってくる。

 メイドとしての技術を上げる前に、メイドについてもう少し見つめ直すべきだろう。

 見つめすぎて不敬だと思われないよう、少しディートリッヒ様の視線から目を逸らした私は、未来の自分に様々なミッションを託す。

 私はやれば出来る子。やれば出来る子。
 そう自分に言い聞かせていると、ディートリッヒ様は馬車に乗り込んで以来、閉じたままだった口をゆっくりと開いた。

「アイヴィー」
 低く短いその声はお叱りのものだろうか。
 目の前の主と目線を合わせ、これから投げつけられるだろう言葉を想像する。そして思わず身を堅くする。
 けれど続きの言葉を探すように視線を彷徨わせたディートリッヒ様からのお言葉は、決して私が想像していたような物ではなかった。

「マリー様から何を吹き込まれたかは知らないが、本気にしないでくれ」

 なんだ、そんなことか。
 思わず拍子抜けしながらも「はい」と承諾の言葉を返す。

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