アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 もしかしてずっと無言だったのは、私がディートリッヒ様に惚れられていると勘違いして、そういう目を向けられていたらどうしようかと悩んでいたのだろうか。
 もしも私がハイエナ令嬢達くらいポジティブな思考を持ち合わせていたら「もしかして私達って両思い!?」とはしゃぐところだろう。

 けれどそんな過ぎたことを掘り返してもロクなことにならないのだ。
 折角何もなかったことにして、私自身を評価してメイドとして働かせてもらっているのに。そんなもったいなくて、人の期待を裏切るような行為はしない。安心して欲しいという意味を込めて、そのまままっすぐと視線を固定する。するとディートリッヒ様は無表情のまま、何度か瞬きを繰り返すと視線を逸らした。

 安心、してもらえたのだろうか。
 少なくともハイエナ属に属していないことだけでもご理解いただけると嬉しい限りである。

 こうして再び馬車内は静寂に包まれる。
 けれど心配事を一つ解消してくれたらしいディートリッヒ様が私を見つめることはなくなった。代わりに窓の外を眺めて何か考え事にふけり始めたが、それは一介のメイドが口出しするようなことでもないだろう。



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