アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 熱気のこもった部屋で、ふとこの空気に似つかわしくない冷たい視線が刺さる。
 いったい何が?
 視線を感じる方向へ首だけ捻ると、そこには先ほど部屋を後にしたばかりのディートリッヒ様の姿があった。近くの時計に目を向けてみれば、時計の針はとっくにお昼の時間帯を過ぎていた。
 その割には昼食の声がかからなかったようにも思うが、そこは空気を呼んだのだろう。
 ドアの空いた気配も音もしなかったが。
 それにしてもディートリッヒ様はいつからそこにいらっしゃったのだろうか?
 彼は何も言わず、ただただ腕を組んで私達に視線を降り注ぐ。
 気づかなかった私も悪いが、声をかけてくれれば良かったのに。いや、せめて音でもたててくれれば気づくことができただろう。
 黙ったままの主にぺこりと頭を下げる。すると彼はタイミングを見計らっていたのか、それを機にツカツカとわざとらしく音をたてながら歩みよってくる。

「……………………あなたがたはいったい何をなさっているのですか?」
「ディートリッヒ! なぜここに!?」

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