アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 声をかけられてやっとディートリッヒ様の存在に気づいたらしい、シンドラー王子とマリー様は驚いたように目を見開く。
 なぜかドレスのデザインを隠すように机の前にゆっくりと移動して、後ろ手でささっとそれらをまとめてしまう。

 まるで都合の悪いものを隠すかのように。

「休憩に入ったので様子を見に来てみれば、昼食は摂らずに何かに夢中になっているらしいとの報告を受けまして。アイヴィーがいるのにお茶すら用意しないなんておかしいと思って見てみれば……。なぜドレスのデザインなんてものを机の上に広げているんです?」

 その声に部屋の空気は一気に温度が下がる。

 そういえばお茶すらお出ししていなかったわ。

 一昨日、用意する者の手が足りていないのは聞かされていたのに、もう少し気を回すべきだったと反省してしまう。けれどそれを私が積極的に行うことが出来ないのもまた事実。あくまで私は訪問者である。アッシュ家のメイドだと二人に強く宣言したディートリッヒ様がそれを私に強要することはないだろう。

 だからお叱りのポイントはきっとそこではない。
< 117 / 241 >

この作品をシェア

pagetop