アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 大抵それは王子が本を読み終わるまでの時間を私が稼いで、読み終わったらシンドラー王子は大人しく帰る、という約束で、いつだってそう長い時間ではなかった。
 だから私は何度だって、王子のお目付役の騎士であるディートリッヒ様からシンドラー王子をかくまったのだ。


「シンドラー王子、もう少し抜け出す頻度を減らしてくれませんか? 王子をかくまってることがディートリッヒ様にバレたら私、クビですよ。ここをクビになってお金が満足に稼げずに結果、お姉様のウェディングドレスが納得いかないものになったりしたら、私、一生王子を呪いますからね!」
 いつものようにディートリッヒ様の鋭い視線に耐えた私は王子にそう漏らした。普通だったら、呪うなんて王族相手に言い放てば速攻で不敬罪で捕らえられてしまう。けれどこの頃には私と王子の仲はそんな柔なものではなかった。

「もしもアイヴィーがここにいられなくなった時には俺が他の職場を紹介してやるから安心しろ!」
 こんな冗談をいえるほどになっていたのだ――と思っていたのだが、どうやらそれを冗談と受け取っていたのは私だけのようだった。

「それで新しい職場なんだが……」
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