アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 シンドラー王子もマリー様も、そんな私の図太い精神事情を理解しているからこそ、相談してくれたのだろう。

「ええ。引き出しの中に大事にしまい込んでいらっしゃいましたよ」
 けれどディートリッヒ様のお気持ちを無碍にすることは出来ない。
 だから私は鍛え上げたお仕事スマイルでそう答えるだけ。
 何か言いたげに視線を動かすディートリッヒ様。けれど結局「そうか」とだけ告げて再び口を一文字に閉じるのだった。


 ガタゴトと揺れる馬車から明かりが流れ込んでくる。
 王都の街灯と店から放たれるものだ。
 都というだけあって、ライト一つとっても決して下品だと感じるものはなく、華美でありながら上品な柔らかなライトは心地のいいものだった。
 横目でチラッとだけ外を見て、お目当ての店が営業中であることを確認し、再び視線を固定する。

 一旦、お屋敷に戻ってから小走りで向かえば間に合うな。
 屋敷についたらディートリッヒ様を見送って、真っ先にキッチンへと向かう。ルターさんに今日のまかないは不要であることを告げて、ベルモットさんに外出する旨を伝える。
< 122 / 241 >

この作品をシェア

pagetop