アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 お財布さえ持たせてもらえない私が来た意味ってあったのだろうか。
 馬車での会話で例年通り、稽古用品をプレゼントすることを決めたのであれば、お屋敷で済むことだったはずだ。

 それこそ昨日、聞いてもらえれば……。

 ディートリッヒ様の考えていることは分からない。
 けれどこれでお買い物が終わりだと思うと気持ちは軽くなる。
 このままお屋敷に戻れば、いつものようにお掃除をするだけの時間もあるだろうし。良かった、良かった。

「アイヴィー、行くぞ」
「はい」

 浮かれた私は軽い足取りで、私用じゃ絶対に来ないであろう店を後にする。
 そしてディートリッヒ様の後に続いて馬車へ向かう――と思いきや、目の前のご主人様は大通り方面へと歩き始めた。

 もしかしてまだ買い物があるのだろうか?
 そちらが私がお手伝いすべきことだったり?

 足の長さがまるで違うのに、全く苦にならない同行の末、たどり着いたのはお高そうなレストラン。

 どうやらディートリッヒ様はお腹が空いていたらしい。
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