アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 無事にフィナンシェを確保し、私にまでお裾分けをしてくれたディートリッヒ様にそう伝える。

「…………ああ」
 目を逸らして小さく答えるその声に、私は思わず笑みがこぼれる。

 私の主人はどうやらメイドにも気を使いすぎるきらいがあるらしい。
 何でもしますからなんて約束がなくたって、ご一緒しますから。だから気軽に声をかけて欲しいものである。


30.
 それから私の思いは通じたのか、ディートリッヒ様はしばしば私を外出に誘うようになった。前日にわざわざ予定を聞いてくる律儀なところは相変わらずだ。
 連れて行かれるのは見事に女性に人気がありそうな店ばかり。きっとずっと行ってみたかったけれど一人では行きづらい店を巡っているのだろう。

 同行のお礼? として、ディートリッヒ様は毎回必ず私の分まで用意してくれる。
 おかげで王都スイーツに少しだけ詳しくなっていく日々だ。

 今日は人気沸騰中の喫茶店までいちごのムースを食べに来ていた。
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