アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 なにせ数年前から顔を合わせて業務連絡をするくらいの仲でしかないのだ。いや、嫌われているなんてこともある。数カ月に一度、メイド一同に差し入れをしてくれることがあるのだが、決まって鋭い視線で見られるのだ。嫌々、というのは初恋に浮かれている私だって分かってしまう。……それでも私は彼への恋愛感情を抱き続けている。初恋に一目惚れと掛け合わせた結果、中々こじらせているということは自覚している。

 それでもディートリッヒ様に顔と名前を覚えてもらっているのは、ただ単純に私がシンドラー王子に気に入られていると勘違いされているからだと弁えているつもりだ。
 その他に何か理由があるとすればそれは私の思考が王子と少しリンクするところがあるところだろうか。
 一度ディートリッヒ様に「アイヴィーに聞いた場所に向かえば大抵そこに王子がいらっしゃる」と誉められたことがある。その時のふっと笑った優しげな笑みに再び心を掴まれた。通常時は無表情、向けられる視線は鋭いときてのこれである。このギャップで落ちる女性は少なくはないはずだ。
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