アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 一気に暗くなってしまった空気を背負いながら訪れた教会はやはり綺麗で。それを見上げるディートリッヒ様の表情はやはり無に近い。けれど「綺麗だな」と漏らしたその言葉は彼の心からの声だと思えた。


31.
 ついにこの時がやってきた!
 この瞬間が楽しみすぎて昨日はなかなか眠りつけなかったが、私の頭はおそらく生まれてから一番冴えている。

 弾む気持ちを脳は身体に伝達し、あぶなく王都でスキップを決める女になりかける。

 それでは不審者である。
 私自身が白い目で見られるのは百歩譲っていいにしても、さすがにこれから会う男は巻き込むわけにはいかない。
 とりあえず落ち着け。はしゃぐのはまだ早いぞ。頭に何度も信号を送る。そしてディートリッヒ様さながらの無表情で王都を闊歩する。

 それでもなかなか怪しいが、そこはまぁ許して欲しいところだ。

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