アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 王都から少し離れた場所にある湖だ。きっと知り合いに会うこともないだろう。自然に囲まれて心安らかに過ごそうと決め、途中でお昼も購入した。
 軽装で外れへと突き進む女性は珍しいのか、すれ違う人には何度となく視線を向けられた。だが特段危険があるという訳ではないのだ。離れているといっても私の足で数十分ほど歩けば着くような距離。つまり手軽な自然環境という訳だ。

 訪れるのは数年ぶりだが、湖の水は相変わらず透き通っていた。
 落ち込んだ時はここに来るとすっきりするんだ、と教えてくれたのはセルロトだった。
 以前訪れたのは、風邪を引いていることに気づかずに働き続けて倒れて、メイド長に叱られた時だった。

「自己管理も出来ないなんてメイド失格よ」
 もうすっかり一人前のつもりだった私は、メイド長の遠回しな優しさに気づかずにべっこべこに凹みきっていたのだ。
 そんな時にこの場所を教えてもらって、一日呆けて過ごしたんだっけ。
 そしたらスゴく落ち着いて、次の日には「すみませんでした!」って謝れて……。


 そうか。私、落ち込んでいるのか。
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