アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 過去の出来事を思い出してから、今の自分の感情をやっと理解した。

 やりきったとか。
 お姉様とジャックが幸せなるんだとか。
 そんなことを思いながらも、残されたことに寂しさを感じていたのだ。

「誰も置いていく訳ないのに、バカだなぁ……」
 自分への言葉を漏らすと、ぽとりと手の上に水滴が落ちた。

 雨?
 こんなに晴れているのに?
 空を見上げてもやはりそこに広がるのは雲がぷかぷかと心地よさそうにたゆたういい天気。
 ならこの水滴はどこからやってきたものなのか?
 目の前の湖に視線を向ければそこには両方の頬に同じような流れを作り出した私が映っていた。

 どうやらこの水滴は私の涙だったらしい。
 失恋した時ですら泣かなかったのに、可笑しな話である。
 泣いたってどうにもならないのはどちらも同じはずなのに、諦めを長年刷りこみ続けたそれとは別物なのだ。
 それでもこの涙にはきっと失った恋心も含まれているのだろう。

 これはきっと6年分が詰まった涙で、人が流れゆくあの都では流せなかったものなのだ。

 私が前に進むために必要なもの。
 私の背中を見守るのは自然だけだ。
< 190 / 241 >

この作品をシェア

pagetop