アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 ここには誰も私を心配する人はいない。

 確かに落ち込むにはぴったりの場所だ。
 数年ぶりに訪れた湖や周りの木々は私に寄り添うことなく、そこにあり続ける。
 声をかけることもない。

 だから私は安心して、声を殺しながら存分に涙を流すことが出来る。


 微かに残っていた思いも不安も涙に乗せて流す。
 あの場所に戻ったらいつものように笑うから。
 そよそよと木の葉を揺らす風はまるで私を包み込むようだった。



 存分に泣き明かした私は真っ赤な目のまま、王都で買ってきたサンドイッチを頬張る。
 どんなに悲しくともお腹は減るものだ。
 それにひとしきり泣いて、落ち着いた。
 何というか、多分マリッジブルーみたいなものだったのだ。
 結婚するのは私ではないから『みたいな』から一歩たりとも出ることは出来ない謎の感情。

 それに色々と混じって、少し感傷的になってしまっただけ。
 お屋敷から持ってきた水筒からカップに紅茶を注いで、はぁっと息を吐く。

 そういえば泣くのってストレス解消にもいいんだっけ?
 長らく涙を流すことなんてなかったが、このスッキリとした感覚はいいものだ。
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