アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 だから任せて! と気合い十分な様子のマリー様にやる気のない声を返すことしか出来なかった。


35.
 その数日後、悩みが解決したらしいディートリッヒ様はすっかり通常運転へと戻っていた。
 悩みのタネは一体なんだったのか分からないまま。
 それでも再び、私を連れて王都に繰り出すほどに機嫌が良くなったのはいいことである。

 連れてこられた喫茶店でショートケーキを黙々と食べ進めるディートリッヒ様はもちろん無表情。けれど私に向けるその目はほんの少しだけ柔らかいものに変わった……と私は勝手に思っている。

「食べないのか? 美味しいぞ?」
 フォーク片手にディートリッヒ様を眺めていた私は彼の言葉にハッとする。

「いただきます!」
 見つめられているのも気持ちのいいものではないだろう。
 ディートリッヒ様の代わりにショートケーキに熱い視線を注ぎ、まずは三角形の尖った部分を、お皿と垂直になるようにそぎ落とす。イチゴを含んだ生クリームと、ふんわりとしたスポンジが見事に層となって切り取られた。


 フォークに軽めの負担をかけるそれを口元へと運び――頬張る!


「おいひい」
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