アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 けれどディートリッヒ様は「ただいま」と短く声を返すだけで、すぐにその少女へと冷たい視線を下ろす。

「何をしている」
「お兄さま、怒ってるの?」
「ラティリアーナ。私は『何をしている』と聞いているんだ」
「そ、それは……」
「……ラティリアーナはこの兄にも答えられないようなことをしていたのか」
「……っ」
「はぁ……だんまりか。まぁいい。帰りなさい」
「そんな!」
「帰りなさい」

 妹に対するものとは思えないほどに冷え切った言葉の数々に、ラティリアーナ様は悔しそうに唇をかみしめる。うっすらと涙を貯める目でこちらをキッと睨むと、ドレスを翻す。
 ディートリッヒ様の後ろに待機していた彼女付きの使用人と思われる男性は、ヘラヘラとした笑みを浮かべながら「ただブラコンなだけなのでお気になさらずに~」なんて去っていった。


 一体、なんだったのだろう?
 来るのも早ければ過ぎ去るのも早い嵐をポカンと眺めた。


37.
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